膝の痛み・腫れ・膝が立たない・膝折れ【芦屋・西宮 鍼灸香春】

膝の痛み・腫れ・膝が立たない・膝折れ

 

 

東洋医学の膝の腫れ痛みチェックシート

行痺

❑ 痛みの場所が変わる

❑ 以前に首や肩の痛みがあった

❑ 痛みの程度が軽い

❑ 筋肉が引き攣る

❑ 曲げられるが伸ばしにくい

痛痺

❑ 痛みの場所が固定

❑ 刺したような痛みが強い

❑ 冷えると悪化する

❑ 夜間に痛みが増す

❑ 曲げ伸ばしがしにくい

着痺

❑ 痛みの場所が固定

❑ 身体が重だるい

❑ 関節部に浮腫がある

❑ 皮膚に知覚麻痺がある

❑ 舌に白い苔がべったり

熱痺

❑ 痛みの程度が変化する

❑ 関節部が発赤し、熱感有

❑ 発熱がある

❑ 口が乾く

❑ 脉が早く、舌苔が黄色い

骨痺

❑ 関節部が変形している

❑ 関節が強張る

❑ 屈伸ができない

❑ 腰痛や耳鳴り、めまい有

❑ 脉が沈んで弱い

行痺

 「風邪(フウジャ)」による膝の痛みです。カゼの語源ですね。

 暖かい気温に誘発された痛みです。痛みは遊走性で、色々な所が痛みますが、非常に表層的で、痛み自体も大したことはありません。

 風温の温邪が原因となっているので、性質上、頚こりや五十肩など、上半身の痛みが先行することが多く見られます。

 体表に籠っている熱が痛みの直接的原因です。

 【漢方薬】

葛根湯、防己黄耆湯、蠲痺湯(ケンピトウ)

痛痺

 「寒邪(カンジャ)」、つまり冷えによって膝が痛む場合です。

 温邪に比べて寒邪は移動することが少ないため、痛みの場所は基本的に固定されます。ただ、名前の通り痛みは激しいケースが多く見受けられます。

 冷えが原因で悪化しやすく、特に夜に痛みが激しくなる傾向があります。

 体組織に冷えが滞っている状態ですが、そのベースに生理的作用を失って病理産生物となってしまった痰や飲(水分のこと)、瘀血などがあり、冷えの温床となっていることがあります。

 【漢方薬】

疎経活血湯、桂枝加朮附湯、舒筋丸

着痺

 本証はベタベタとくっつくイメージの「湿邪」が原因となっています。

 べったりくっつくタイプの邪なので、身体も重ダルく関節も腫れて痛みます。粘り強いのか、症状も完治が難しく、長期化しがちです。

 湿気が神経伝達を阻害するためか、知覚も鈍くなります。

 湿気は病理産生物となってしまった津液(痰や飲、汚水など)が正体ですので、温めると一時的にですが、痛みが緩和される特徴があります。

 【漢方薬】

二朮湯、薏苡仁湯、麻杏薏甘湯、防己黄耆湯

熱邪

 痛みが激しくなったり、治まったりと、症状が一定しないのが「熱邪」による熱痺です。

 関節部が発赤して熱を持ちやすく、場合によっては発熱もします。

 体内に熱が旺盛となっているため、口が乾いて水をよく飲み、身悶えをしたりもします。軽い熱中症のような状態です。

 舌は赤く、舌苔は黄色くなっていることが特徴です。

 【漢方薬】

越婢加朮湯、白虎湯、桂枝芍薬知母湯

骨痺

 骨痺は慢性化しやすいことから、久痺、頑痺などとも呼ばれます。名前の通り、骨自体にトラブルが発生しており、変形性膝関節症などが該当します。

 関節が変形して強ばり、屈伸ができなくなっています。これは骨の変形によるところであり、骨が正常に形を保てないのは「腎精」が消耗されてしまったこと、血(ケツ)が不足していることなどがベースにあります。

 そのため、腰痛耳鳴りめまいといった腎の症状を一緒に発症していることがよくあります。

 【漢方薬】

大防風湯、舒筋丸

膝が腫れて痛む「痺証」の原因

 今回は「変形性膝関節症」「大腿膝蓋関節炎」ではないのに膝が痛むというケースや、膝に力が入らず

立ち上がれないなどの膝のトラブルについてになります。変形性膝関節症については →→→【こちら】

 東洋医学的には関節の痛み全般を「痺証(ヒショウ)」、力が入らない症状を「痿証(イショウ)」といいます。

本来は変形性膝関節症も「痺証」に分類され、「骨痺」「久痺」などと呼びます。

 この「痺証」は必ず腫れを伴うというわけではありませんが、わかりやすく左の図を用意しました。

典型的によく見かける、“関節に水が溜まっている”という状態ですね。

 水が溜まる原因は、膝関節で炎症が発生しているためです。炎症は変形性膝関節症大腿膝蓋関節炎

リウマチ、痛風などによって発生します。この炎症を治めるために関節液が大量に供給され、関節内に

溢れて、膝の皿の上あたりに溜まってしまいます。そのために腫れるのです。ちなみにこのリウマチや

痛風も「痺証」の分類に入ります。

膝の腫れ痛み「痺証」の東洋医学的原因

 「痺証」を誘発する原因は、変形性膝関節症のような物理的要因を

除くと、東洋医学的には「六淫(リクイン)」という外邪によるものです。

「六淫」は左の図にあるように、「風・熱・暑・湿・燥・寒」の邪を

いいます。これらは季節に連動しますが、食べ物や生活環境などにも

影響を受けます。この内の「風・熱・湿・寒」の邪がそれぞれ、

「行痺」「熱痺」「着痺」「痛痺」に対応して誘発します。チェック

シートにある「骨痺」だけは変形性膝関節症などを指します。

 つまり「痺証」は外邪があなたの弱点に呼応した結果だといえます。

膝が立たない・膝折れ「痿証」の東洋医学的原因

 膝や筋肉、骨に力が入らない症状を「痿証」といいますが、これには知覚鈍麻なども含まれます。

 東洋医学的には陽明経の湿熱がある為だとされます。ただ『脾胃論』には「若し肌肉濡潰し、痺して

不仁し、傳えて肉痿の証と為れば証中に皆肺疾有り(原典は恐らく『金匱要略』か)」とありますから、

その元には肺のトラブルがあると考えられています。“肺は百脉を朝(アツ)める”とされるので、古人は

陽明経(胃腸)の熱が肺に集まって経脉を弛緩させ、筋肉を萎えさせるものと考えていたのでしょう。

 この脾胃や肺の熱は外邪(暑・熱)によるものと生活習慣の不摂生によるものとがあります。飲酒や

美食などが過ぎた結果、「痿証」を発症するのです。

 このような病理を「外邪」に対応して、「内傷(ナイショウ)」といいます。

「痺証」「痿証」の鍼灸治療

 「痺証」「痿証」は季節の影響が大きいため、当院では単純な直接的原因だけで配穴を判断することは、

まずありません。ただ、体調を調整する基本となるツボや局所的な配穴はあります。

 「風邪」が原因の場合なら、胆経足竅陰、肝経行間』『中封』『大敦で風邪の影響を除きます。

 「寒邪」なら、膀胱経委中、腎経湧泉』『太谿』『陰谷が寒邪の冷えを撃退します。

 「湿邪」には、胃経陥谷、脾経商丘』『隠白』『太白が効果的です。

 「熱邪」であれば、小腸経前谷、心経神門』『少海』『少府をよく使います。

 「骨痺」の時は、太谿』『尺沢』『陰谷』『曲泉』『太衝を中心に考えますが、骨痺の場合は骨が

変形してしまっているので、痛みに対して対症的に処置することが多くなります。

 加えて寒邪や湿邪なら「土穴」「金穴」などの温性、熱性のツボをよく使いますし、熱邪や風邪なら

「水穴」のような冷性のツボや「金穴」のような行気性のツボが選択肢になります。

 このような病の性質に基づいた施術を「本治法(ホンチホウ)」といいますが、症状や痛みに対して行う

「標治法(ヒョウチホウ)」を併用することで治療効果が大きく向上します。

 ふにゃふにゃとした軟らかい浮腫がある時は、たいてい痛みは強くなくとも、歩行に障害があります。

胃腸虚弱型の老人に多く、直接灸や電気針などの刺激は、却って悪化することがあります。浮腫にごく

浅い置鍼を数本します。胃腸を活気づけると改善効率が固まるので、大陵』『太白』『内関』『公孫』

などをよく使います。以外に治療成績のよいタイプです。

 炎症と堅い浮腫がある場合、肥満して汗かきな方が多く見られます。胃腸は丈夫でよく飲食しますが、

小便は少ない傾向があります。炎症が強いため、知熱灸でじわっと発汗させるようにして清熱します。

一般的なチクっとする透熱灸は適しません。炎症を悪化させる可能性があります。

 胃腸は丈夫でも、食後に眠くなったり、下痢や便秘があったり、手足がだるいなどの症状があるなら、

大陵』『太白』『労宮などと、『上巨虚』『下巨虚』を補助的に使います。

 腎によるものなら太谿』『太衝』『然谷などにツボを変更して使います。

 筋肉の引き攣りがあり、動作時に痛むなら、これは関節部の炎症によるものの可能性が濃厚です。

運動や労働が原因となっていることが多く、疲労部や硬結部に電気針、灸頭鍼などの刺激が強めの施術を

することが多いです。

 これらのパターンとは異なり、炎症も浮腫も見られないという場合もあります。これは老化によるもの

が多く、屈伸したりすると痛みますが、指で圧迫してもさして痛みません。つまり深部痛なのですが、

これも灸頭鍼や透熱灸で施術しています。経験上、浅い鍼はあまり効果がなく、深く刺してもイマイチです。

 これら以外にも股関節を『髀関』『環跳』などで緩め、『承扶』『殷門』を加えて血流を改善する必要

もあります。委中』『陽陵泉で太ももの筋肉の緊張を除き、猫背や腰痛があるなら腰背部のツボと

鼠径部の『五枢』『維道』などで腸腰筋へのアプローチが効果的です。特に腸腰筋の緊張は骨盤の位置異常

と合わさって腸骨動脈を圧迫することがありますから、重要視しています。

膝の腫れ痛み・膝折れの漢方治療

 葛根湯は体表面に熱があって、疼痛局部にも熱感を感じます。風邪が対象になりますから、上半身に

筋緊張が強く、特に頚肩のコリ感を強く感じます。

 同じく風邪を対象としますが、浮腫を伴う症状に適するのが『防己黄耆湯』で、湿邪による「着痺」にも

用います。風邪をひきやすい虚弱なタイプで、倦怠感を感じます。利水作用の強い薬なので、特に浮腫

水滞に有効です。小便が出にくい方向けですが、温性の薬なので、熱症状がある場合は不適になります。

 冷えによる痛みの場合はよく『疎経活血湯』をよく使います。本方は血虚に用いる四物湯の類方で、

血虚によって血の流れが悪くって瘀血を形成し、瘀血をベースに冷えがあって痛む場合に適用します。

水滞浮腫神経痛リウマチが対象になります。

 同じくリウマチ、神経痛、関節炎などが対象になる『桂枝加朮附湯』は、更に冷えが強い、陽虚状態に

用いられます。温性が強く、冷えによる「痛痺」のみならず、半身不随などにも使われます。

 「痛痺」によく似た「着痺」は水気や湿気が病原となったものです。『麻杏薏甘湯』は水浴びなどで身体を

冷やして湿気を体内に招き入れて痛みが出たような時に用いられますが、『金匱要略』の文中には「発熱、

日晡所劇者」とあります。これは夕方に発熱が激しくなるという意味ですが、これは陽明経に熱があること

を示唆していますから、湿気と冷えで陽明経の内熱が発散されないことによる痛みを、除湿と温煦作用で

緩和するという立て付けの漢方薬です。冷やしてできた水いぼの治験例を目にしたことがあります。

 同じく「着痺」に用いられる『薏苡仁湯』は、朝に強ばって膝が動かないようなタイプの方に適します。

関節が腫れ筋肉が引き攣り痺れ感があります。これは血虚があるためで、同時に水滞をきたして

います。血虚から生じた虚熱が陽明経に渡っているので食欲はあります。同時に陽明経が支配する肌肉の部位

にも熱が溜まって、水滞した湿気と争って痛みが出ています。これが水いぼの原因にもなります。

 『越婢加朮湯』も病理はよく似ていて、湿と熱による痛みに使います。他方に比べて内熱の症状が強い

ため口が乾き汗も出にくい傾向があります。小便が出にくいため湿気をため込みますが、「行痺」

「着痺」に使われる『防己黄耆湯』に比べると浮腫が硬く、実腫と呼ばれます。使い方がよく似ていると

いわれる『麻杏薏甘湯』は胃熱が主であるのに対し、本方は胃腸の熱に肺にも熱があります。これは先に紹介

した「痿証」「痺証」の原理ですね。

 「熱痺」の場合で、湿の関与が少なく、熱が旺盛な場合に使うのが『白虎湯』になります。口渇感や熱感

が強く関節部の腫れ・痛みも大きくなります。清熱作用が高いため「熱痺」に有効ですが、身体の水分

(津液)が欠乏している場合は『白虎加人参湯』として処方することもあります。

 骨までが変形してしまうような変形性膝関節症は、骨を作る腎精と肝血の枯渇が原因です。『大防風湯』

は気を巡らせて血液を供給し、筋骨を育てる作用で変形した骨痩せ衰えた足を回復させる効果があり

ます。半身不随にも用いられますが、胃腸の弱い方には不向きです。

芦屋 鍼灸 香春(こうしゅん)【JR芦屋徒歩6分】

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