『太白(たいはく)』【芦屋・西宮 鍼灸香春】

【脾経原穴・兪穴。足の内側、第1中足指節関節の近位陥凹部に取穴する】

 漢方医学的にいうと脾という臓は、消化吸収の司令塔的存在です。胃を動かして消化するのも、小腸から

飲食物から栄養を吸収させているのも、脾が指示を出してコントロールしているのです。

 本穴『太白』はそんな脾経の中でも中心的存在であり、脾自体にエネルギーを供給する極めて重要なツボ

になります。原穴(ゲンケツ)、兪土穴(ユドケツ)という役職名はそれを表す名称でもあります。会社でいうと

「社長」とか「専務」にあたります。

 そのため、下欄の【主治・効能】には胃腸の不調の文字が多く見られます。つまり、胃腸不良の方には

脾に連なる脾経をよく用いるということで、本穴はその代表格だということです。

 

 【脾の役割について】

 木火土金水のことを「五行(ゴギョウ)」といいますが、これはユニット名のようなものです。その中で

脾は「土」属性の臓になり、ポジション的にはユニットの中心に位置します。

 確かにリーダーは「火」属性の心なのですが、水も食べ物も金属も、万物は「土」の中で生成され、再び

「土」へと還ります。誰しも大地の恵みである飲食物からエネルギーを得ているわけで、それは人の健康に

とっても同じことです。エネルギー供給源である消化器系に不調があると、心臓や腎臓に問題がなくとも、

やがてエネルギー不足に陥って臓器の機能が維持できず、身体も健康も損なわれます

 しっかり食べて消化して排泄できるというのが、生命や健康の大前提になっているのが漢方医学なのです。

 

 【当院での経験】

 少し前に当院に来られた高血圧の方が便秘持ちでした。便秘しても辛くはないとのことでしたが、高血圧の

一因になっているのだろうと考え、高血圧の処置に加えて腎経陰谷を主として、左『天枢』『大巨』

『腰眼』、『中脘』などを取穴して施術していました。

 1ヵ月程した頃、施術した日は便通もややよいが、すっきりしないとのことでした。たしかに脈が沈んで強く、

固まったように硬く緊張したような感じがどうしても抜けず、これは裏熱によるものだろうとあたりをつけて

色々奮闘しましたが、結果はあまり芳しくはありませんでした。行き詰まりを感じた頃、五味論から緊張には

甘味がよいのではないかと思いついて、甘味はツボでいうと土穴にあたりますから、『太白』を補ったところ、

脈が緩んで余裕が生まれ、便通もすっきりしたとのことでした。ただ、この方法が効くケースの便秘は滅多に

遭遇しないため、再現性があるのかチェックできないのが残念です。

 

 【太白の自宅ケアについて】 

 『太白』は脾胃の不調のみならず、飲食の不摂生による痛風尿路結石にも有効なツボです。前回ご紹介

した『大都』などと組み合わせて、刺絡で数滴の瀉血をすると効果的です。

 本穴の位置は『大都』の少し後ろになります。足の親指の付け根にポッコリと骨が飛び出していると思い

ますが、この部分を左の図を参考にしながら親指と人差し指でつまんでみましょう。人差し指が『大都』

親指が『太白』になります。

 ご自身でケアする場合、胃腸不良、食欲不振、胸焼け便秘下痢なら本穴を温めてゆっくり1分くらい

マッサージしてください。土踏まずあたりも一緒にマッサージするとより効果的です。

 痛風やリウマチ、食あたりなどの疾患、又は下痢や便秘、食欲不振でも過度の場合は自宅ケアの範囲外

なので、お近くの内科や鍼灸院、漢方店をお訪ねください。

 

 【主治・効能】

・急性腹痛、脛骨頭痛、便難、帯下、後重

・心臓炎、胃痙攣、嘔吐、消化不良、便秘、腸雷鳴、腸疝痛、アジアコレラ、腸出血、腹膜炎、骨膜炎

 腰痛、下肢麻痺、下肢神経痛、局発痙攣

・心臓病、胃痙攣、嘔吐、消化不良便秘、腸雷鳴、下痢、腸疝痛、腸出血、腹膜炎、腰痛、骨膜炎

 筋肉痛、関節炎、下肢神経痛

・心窩部痛、胸満、腹脹、腸鳴、腹痛、嘔吐、下痢、膿血便、便秘消化不良、全身倦怠、脚気

 

(『鍼灸孔穴類聚(松元四郎平)』『経絡経穴の近代的研究(濱添圀弘)』

 『鍼灸集錦(鄭魁山)』『鍼灸経穴名の解説(高式国)』)

 

芦屋・西宮 鍼灸香春(こうしゅん)【JR芦屋徒歩6分】

 

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