葛根湯【芦屋・西宮 鍼灸香春】

葛根湯

 

 

 今回はもっとも有名な漢方薬『葛根湯』についてです。一般的には『桂枝湯』と同様に風邪に使う漢方薬

ですが、桂枝湯とはちょっと薬の仕組みが異なります。また実際には、風邪のみならず、かなり多様な

使い方ができる面白い漢方薬です。

 葛根湯を構成する生薬の「麻黄」にはエフェドリンが含まれるため、なんでもかんでも葛根湯で意外と

風邪くらいなら治ってしまったりします。食料事情、医療事情の悪かった2000年前だったら、それで体調を

崩して悪化するなんてこともあったんでしょうが、現代ならまあ許容範囲になってしまっています。

 ただ、葛根湯の活用を知っているともっと効果的に、安全に、広範囲に用いることができるので、まとも

な漢方家や鍼灸師は必ずこのあたりのコツを勉強しています。

 具体的には、筋肉質で体格のいい人がちょっと体調を崩し始めた時なんかに、1~2服ほどお勧めして

います。さっと瞬間的に効くので、評判も上々です。

 これは葛根湯が発汗を促して、筋肉や皮膚表面の脂肪部分に溜まった熱を発散させるというベクトルの

漢方薬だからです。つまり熱が悪影響を及ぼしている状態を、汗をかかせて発散して元に戻すわけです。

 風邪のひき始めで、使用条件に合うなら、葛根湯は即効性のある優秀な漢方薬といえます。

 適応疾患も、風邪の他に蕁麻疹やニキビ、上半身の潰瘍や化膿症、皮膚炎、筋炎、肩こり、頭痛、耳鳴

虫歯、高血圧、蓄膿症、鼻炎、中耳炎、扁桃炎、かゆみ、腰痛、関節痛、腸炎、神経痛(主に上半身)

などとかなり広範囲に対応しています。「風邪の漢方」などとレッテルを貼るには惜しい薬です。

 効果としては、症状名に“炎”とつくものが多い点から見て「熱が籠って出ていかないための症状」

発汗を促すことで発散させて治すものだといえます。この熱も、胃腸に連なる陽明経(ヨウメイケイ)という

経絡の熱なので、鍼灸を併用する際は胃や大腸に関係する胃経、大腸経を用いたりします。

 ただ、漢方を用いるにはその効果だけではなく、患者の方の状態も非常に重要です。いわゆる診断と

いうやつですが、使用条件だと思ってください。ここを見誤ると効果がないどころか、かえって悪化し

たり、副作用が出たりしますから非常に重要です。本方でいうと汗が出ていない、首や背中が強張る

体格がよい、胃腸虚弱ではない、倦怠感や食欲不振がない、悪寒と発熱があるなどの条件です。他にも、

よく口の周りを舐める子供というサインがあると大塚敬節先生の著書にあります。これには心当たりが

あって、経験上、こういう子供は唇が赤い、または乾燥していることが多いです。

 これで胃が冷えて、少食だったりするなら呉茱萸湯に変方します。

 このようなケースは本来胃を働かせる筈の熱が、先ほどの陽明経という経絡に籠ってしまい、その

通過点にある唇が赤くなったり、乾燥したりするために唇を舐める癖がつくものと思われます。

 また、胃腸虚弱の方には不適と書きましたが、下痢が熱性のものである時は適応することが多いです。

 葛根湯のみならず、漢方全般、引いては鍼灸もこういった身体のサインから疾患の原因を推測して施術

するわけです。病名だけで漢方を決めるのは無理がありますし、かといってサインを頼りすぎても失敗

します。やはり疾患の原因となる身体の変化を見極めなければ、効果的な施術は難しいのだといえます。

 

 葛根湯はその応用範囲の広さから、幅広くアレンジして用いられます。

 蓄膿なら『葛根湯加川芎辛夷』という、辛味で発散作用を向上した漢方薬を使いますし、喉の痛みが

激しい場合は桔梗石膏を加えて、肺の熱を抑えて喉の痛みを治めます。

 また折に触れて葛根湯のアレンジ漢方について、紹介させていただきます。

(『宋版傷寒論』『漢方医学体系(龍野一雄)』

 『漢方診療三十年(大塚敬節)』『漢方療法(山田光胤)』より)

芦屋・西宮 鍼灸 香春(こうしゅん)【JR芦屋徒歩6分】   

                                          

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