🍵桂枝湯(けいしとう)【ツムラ45】

桂枝湯

桂枝(辛温)・芍薬(苦平)・生姜(辛温)3

甘草(甘平)2、大棗(甘平)4

 風邪の初期に使います。風邪の漢方はいろいろとありますが、それぞれにポイントがあります。風邪なら

なんでも『葛根湯』というわけではありません。リスク無視なら、一律葛根湯でもまあいいんですが…。

 少し汗ばむ感じがして、風に吹かれて悪寒する。微熱があって頭痛がする。脉は浮いているが、弱々しい

このあたりが『桂枝湯』のポイントになります。

 つまり、なんかちょっと熱っぽくて寒気がするなあ、という時にしっとり汗をかいていれば使い時という

ことです。

 主な用途は風邪ですが、神経痛、逆上せ、微熱症状、お腹が冷えて下す時にも使います。場合によっては、

お産の後に発熱した時(産褥熱)や悪阻にも、かなり有効なようです。

 病理的には、陽気が少なくなって勢いを失っているために熱の発散、循環ができていない状態です。発散

できないために体表に熱が溜まります。これが発熱の原因になります。古典医学的には体表の事を太陽経と

呼ぶので、このような病態のことを『傷寒論』では「太陽病」というカテゴリーに分類します。

 また、発散と循環が衰えているため、汗腺が緩くなって汗が漏れてしまうため、しっとりと汗をかきます。

 本方は陽気の生産を促して汗腺を活性化させ、熱を発散させて解熱させます。

桂枝湯の鑑別

 同じ風邪の初期でも、汗が出ずに首や背中がこるなら『葛根湯』がよいです。ただ胃腸の弱い人には不適

な場合があります。葛根湯に似て汗が出ず、加えて身体の節々が痛むなら『麻黄湯』がよいでしょう。

 胃腸が弱いなら『香蘇散』を使うことがあります。少し神経質で、寡黙になりがちな人に適します。

 寒気が強く、氷枕をすると却って悪化したり気分が悪くなるなら、『麻黄附子細辛湯』。

 風邪が長引いて、拗らせてしまった時、少し汗ばむ感じがあり、胃の上あたりが痞えて硬くなっている

なら、『柴胡桂枝湯』でしょう。柴胡桂枝湯は応用範囲が広いので、また別に述べます。

 微熱があって、透明な鼻水が出て、水っぽい痰が絡む。胃に水が溜まり、ゼイゼイとした喘鳴が出る

なら『小青竜湯』を用いると楽になります。胃腸の弱い人には不適な場合があります。

 粘っこくて黄色い痰が絡み、咽喉がパサパサに乾いて発作的な咳が出る、のぼせるなどの症状がある

時は『麦門冬湯』で咽喉や呼吸が楽になります。

 自然と汗をかいてしまうという現象を「自汗(ジカン)」といいます。これは汗が漏れ出てしまっている

状態です。このような状態は、漢方医学的に表現すると「衛気(エキ)」が虚しているといわれます。

 衛気というのは、例えば、ご自身の腕から1㎝ほど離して手のひらをかざしてみると、かすかな温もりを

感じると思いますが、この現象を「不感蒸散」といいます。これは生体のバリアのようなもので、あなたの

身体を守るシステムで、陽気が勢いよく発散している状態です。これがおよそ「衛気」にあたりますが、

それが虚しているということはバリアが弱くなって、病邪の侵入を許して風邪をひいてしまったという意味

になります。

 このような時に桂枝湯はお腹を温めて消化吸収を促し、食べ物から作ったエネルギーで衛気を回復させ、

体表の余分な水分を発汗させます。この際に熱を冷まし、病邪を追い出して風邪を治してしまうのです。

(『宋版傷寒論』『漢方診療三十年(大塚敬節)』

 『漢方療法(山田光胤)』『漢方医学大系(龍野一雄)』より)

 芦屋・西宮 鍼灸 香春(こうしゅん)【JR芦屋徒歩6分】

 

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