🍵小青竜湯(しょうせいりゅうとう)【ツムラ19】
小青竜湯
小青竜湯と風邪・感冒
『小青竜湯』は水毒が主体となっている風邪に最適な漢方薬ですが、ではこの水毒が溜まってしまう
原因はどうなっているのかというと、水が正しく消化吸収されず、不要な水分を順調に排泄できていない
ことが原因です。胃腸の働きが悪くて身体が水浸しになっているわけです。
東洋医学では消化器を動かしているのは「脾」であり、脾を動かすエネルギーを「脾陽」といいます。
そして脾陽は生命の根本である「腎」のエネルギーの「腎陽」から供給されています。つまり小青竜湯の
適応する風邪には本質的に腎陽の不足があって水分コントロールができず、胃腸にあふれ、加えて消化器
の働きが悪化して、胃腸に水分が溜まったために身体が冷えて、痰や鼻水となっている状態といえます。
つまり、身体が冷えたために発散力が低下し、身体を守る「衛気(エキ)」が弱体してしまって、風邪を
ひいているというわけです。
そのため熱症状は少なく、冷えの症状が目立ちます。ただ胃腸に熱気はないのですが、胃腸につながる
「陽明経」には熱が残っていることがあり、この陽明経は鼻や唇の傍を通過しているため、鼻炎症状を
呈することがあります。
治療方針としては発汗を促すために、痰や水分で水浸しの体内を温めて陽気を回復させ、発散を促し
ます。『小青竜湯』はおおよそこのようなベクトルの漢方薬です。
小青竜湯の誤治
ここで一つ間違いやすいのが、風邪をひいて、ノドがイガイガするので水をよく飲み、水太りして鼻水と
痰が出るというパターンがあります。
私がそうなんですが、ぱっと見すると小青竜湯が適応するように見えたりします。実際、病院や漢方屋
で処方されたりします。でもこれは小青竜湯証ではないことがあります。私の場合、小青竜湯を飲むと胸が
苦しくなって咳が悪化し、気分が悪くなります。これは身体の芯の部分、おそらく胃腸の熱が呼吸器に閉じ
込められているため、体内を温めて乾燥させてしまうと、体内の熱(内熱)が昂って悪化するわけです。
この時はたまたま手元にあった『麦門冬湯』で、すっとノドのイガイガ、胸の痞えが取れ、咳も長引く
こともなく治癒しました。『苓甘姜味辛夏仁湯』や『甘草乾姜湯』がいいかなとも思ったんですが、手持ち
になかったので『麦門冬湯』をチョイスしたんですが、結果的に良かったわけです。
症状だけ見るとほぼ同じなので見分けがつきにくかったのですが、脉を圧迫して診ると強く拍動し、食欲
はあり、暖まると苦しく、咳が発作的で激しいといった症状がみられたことが、鑑別要因になりました。
後は普段からの体質で、粘った痰が絡みやすいというのも一因になりました。石膏などを加えるとなおよい
と思われます。
(『宋版傷寒論』『漢方医学体系(龍野一雄)』『大塚敬節著作集』
『臓腑経絡から見た薬方と鍼灸(池田政一)』より)
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