小青竜湯【芦屋・西宮 鍼灸香春】

小青竜湯

 

 

小青竜湯と風邪・感冒

 これも風邪に使う漢方とされます。ただ、ここまでに紹介した『桂枝湯』『葛根湯』『麻黄湯』とは

ちょっと趣きが異なります。これらの漢方はどちらかというと熱症状が強いイメージですが、本方は

冷えを主体とした風邪に向いています。

 目標としては寒気、微熱があり、呼吸がゼイゼイする。胃に水気が多く、水っぽい痰や鼻水が出て、

小便は透明で出にくい。温まると楽になる。このあたりがポイントになります。これはお腹に水がある

ために身体が冷えて、痰や鼻水になっている状態で、「水毒(スイドク)」といいます。

 主な症状は風邪、喘息、気管支炎、鼻炎、花粉症といった呼吸器系疾患を中心に、腎炎、ネフローゼ、

肋膜炎、結膜炎、羞明にも用いられます。

 『小青竜湯』は水毒が主体となっている風邪に最適な漢方薬ですが、ではこの水毒が溜まってしまう

原因はどうなっているのかというと、水が正しく消化吸収されず、不要な水分を順調に排泄できていない

ことが原因です。胃腸の働きが悪くて身体が水浸しになっているわけです。

 東洋医学では消化器を動かしているのは「脾」であり、脾を動かすエネルギーを「脾陽」といいます。

そして脾陽は生命の根本である「腎」のエネルギーの「腎陽」から供給されています。つまり小青竜湯の

適応する風邪には本質的に腎陽の不足があって水分コントロールができず、胃腸にあふれ、加えて消化器

の働きが悪化して、胃腸に水分が溜まったために身体が冷えて、痰や鼻水となっている状態といえます。

 つまり、身体が冷えたために発散力が低下し、身体を守る「衛気(エキ)」が弱体してしまって、風邪を

ひいているというわけです。

 そのため熱症状は少なく、冷えの症状が目立ちます。ただ胃腸に熱気はないのですが、胃腸につながる

「陽明経」には熱が残っていることがあり、この陽明経は鼻や唇の傍を通過しているため、鼻炎症状

呈することがあります。

 治療方針としては発汗を促すために、痰や水分で水浸しの体内を温めて陽気を回復させ、発散を促し

ます。『小青竜湯』はおおよそこのようなベクトルの漢方薬です。

小青竜湯の誤治

 ここで一つ間違いやすいのが、風邪をひいて、ノドがイガイガするので水をよく飲み、水太りして鼻水と

痰が出るというパターンがあります。

 私がそうなんですが、ぱっと見すると小青竜湯が適応するように見えたりします。実際、病院や漢方屋

で処方されたりします。でもこれは小青竜湯証ではないことがあります。私の場合、小青竜湯を飲むと胸が

苦しくなって咳が悪化し、気分が悪くなります。これは身体の芯の部分、おそらく胃腸の熱が呼吸器に閉じ

込められているため、体内を温めて乾燥させてしまうと、体内の熱(内熱)が昂って悪化するわけです。

 この時はたまたま手元にあった『麦門冬湯』で、すっとノドのイガイガ、胸の痞えが取れ、咳も長引く

こともなく治癒しました。『苓甘姜味辛夏仁湯』や『甘草乾姜湯』がいいかなとも思ったんですが、手持ち

になかったので『麦門冬湯』をチョイスしたんですが、結果的に良かったわけです。

 症状だけ見るとほぼ同じなので見分けがつきにくかったのですが、脉を圧迫して診ると強く拍動し、食欲

はあり、暖まると苦しく、咳が発作的で激しいといった症状がみられたことが、鑑別要因になりました。

後は普段からの体質で、粘った痰が絡みやすいというのも一因になりました。石膏などを加えるとなおよい

と思われます。

 漢方が面倒に思われるのは、こういったよく似た症状が、全然違う漢方薬でないと治らない、といった

ことがあるためでしょう。だからこそ漢方薬をお求めの方は必ず専門の漢方店を訪れて、身体の調子を診て

いただいてから、ご購入ください。

 不妊治療だからといって『当帰芍薬散』『温経湯』と決めて販売しているような漢方販売店がお勧めでき

ないのは、こうした経験に基づいているからです。お困りの場合は、当院に電話でご相談ください

(『宋版傷寒論』『漢方医学体系(龍野一雄)』『大塚敬節著作集

        『臓腑経絡から見た薬方と鍼灸(池田政一)』より)

芦屋・西宮 鍼灸 香春(こうしゅん)【JR芦屋徒歩6分】

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