高血圧【西宮・芦屋 鍼灸香春】

高 血 圧
高血圧の基礎知識と原因

昨年9月に改訂された高血圧の定義には、さしたる変更がありません。ただ「目標とすべき血圧値」が
成人は一律に130ー80となりました(家庭内での計測では125-75)。
正直、この扱いには疑問もあります。高齢者と20代の若者を同一基準で測るなんて、意味があるとは
思えませんからね。
しかし、鍼灸師としては、そこを論点とするのもあまり有意義なこととは思えません。

【高血圧の分類】
高血圧は「本態性」と「二次性」に分けられます。病気や臓器の不調に
よるものを「二次性」といい、全体の1割程度がこちらにあたります。
原因が明確なので、手術や服薬によって改善を図ります。
逆に原因がはっきりしない場合を「本態性」と呼びます。運動不足や喫煙、
塩分の過剰摂取、肥満、ストレスなどといった生活習慣がリスク要因となる
ため、多くの場合は改善指導が施されます。こちらは全体の9割を占め、
いわゆる一般的な高血圧といえば「本態性」を指します。

では、高血圧の直接的な原因はというと、自律神経やホルモンバランスの乱れ、血管内皮の機能低下、
腎臓の機能低下などになります。その結果、心拍出量や末梢血管の抵抗、血中塩分増加による血液量の
増量などが誘発され、最終的に高血圧を発症します。
以上の事からすると、鍼灸の出番などないかのようにもみえますが、意外とそうでもありません。
むしろ、特に「本態性」の場合、東洋医学の方が好適するというケースもあります。
東洋医学と高血圧

東洋医学では高血圧の正体を「虚熱」と定義しています。あと、関与する要素として「痰湿」が挙げ
られます。
「虚熱」とは、主に内臓のオーバーワークによって「血」「津液」といった液性成分を消耗してしまい、
冷却ができなくなって発生してしまった廃熱をいいます。スマホを使っていると熱を持つのと同じです。
この「虚熱」が上半身に籠った結果、心臓に負担がかかって高血圧となるのです。そのため、動悸や
頭痛、口渇、不眠、不安感などを併発することがあります。
問題は、この「虚熱」がどの臓腑から発生したのか、です。東洋医学では、それを脈診や腹診、舌診、
症状から類推して、どの経絡の、どのツボを用いるのかを決めるのです。


以上のような治療法を「本治法(ホンチホウ)」といいます。病の根本原因にアプローチすることを目的
とした治療法です。
そして対となるのが「標治法(ヒョウチホウ)」です。こちらは局所療法になるのですが、発症している場所に
アプローチすることを旨とする治療法です。
「本治」「標治」は、実際には完全に区別することはできないのですが、実はこの「標治法」がある種の
本態性高血圧に極めて有効なのです。
高血圧の鍼灸治療

同じ本態性高血圧であっても、本当に原因らしい原因がない場合や、左右で血圧の計測値が異なる場合、
血圧値は正常なのに高血圧症状だけが目立つ場合など、西洋医学でも原因不明といわれるような高血圧に、
鍼灸の「標治法」で改善できるケースがあります。
以上のようなケースは、簡単にいうと血流が悪くなっていることが多いです。筋肉の緊張などによって
血管が圧迫されて血圧が高まっているのです。ちょうど、ホースを強く握れば水は出にくくなり、手元で
水圧が高まるというのと同じです。
問題はどこで詰まるのかということですが、多くの場合は鼠径部、肩部、頚部です。ここの圧迫を取り
除くことで、高血圧が改善できることがあります(「関西漢法苞徳之会」大西宏治会長講義より)。

【当院での経験】
年末に来られた80代男性ですが、血圧が180を超えることもあるという方で、身体が苦しく、頭痛があり、
降圧剤も効きにくいと来院されました。少々の鬱もあるように見受けられました。
便秘が強いとのことだったので、初めは『調胃承気湯』と『四物湯』を勧めつつ、排便を促すように施術
していました。お腹で便や瘀血が痞えると気が逆上せるので、それによる高血圧だと考えてのことでした。

しかし、2~3回施術して、便通は改善してきたのに血圧にはほぼ変化がありませんでした。そこで
もう一度よくよく問診してみると、奥さんがいうには、左で計測した時だけ血圧が高く、右で計測すると
それほど高くはならないとのことでした。これはと思い、右手が痺れたりすることはありませんかと聞いて
みたところ、書き物をしていると痺れてくるとの答えが返ってきました。
つまり、右に胸郭出口症候群があって鎖骨下動脈が圧迫されたため、右手の血流が乏しくなってしまい、
血圧に異常が出にくくなっていた。行き場を失った血液は、ホースを握れば手元で水圧が高まるように、
左の高血圧として出現したのだろうと推測し直しました。

結局、それから数回、右の巻き肩の処置をして、頚部の緊張を取り除くように施術すると血圧の平均値が
150くらいにまで改善して落ち着いてきたので、よしとしました。
これと同様の事態は鼠径部や下腿部でも発生し得ますから、『三陰交』や『崑崙』『飛揚』などに降気、
巡気の作用があるとされるのは、こうした理由によるものなのだろうと思われます。

【解説】
上記の高齢男性は、右に胸郭出口症候群があって、鎖骨下動脈~腋窩動脈を圧迫していたケースでした。
そのため、左右の血圧に差が出ていたのでしょう。このような遠隔部の血流障害によって高血圧に至ると
いうことは、よくあります。たとえば、鼠径部には腸骨動脈が走行しますが、腸腰筋の緊張などによって
下肢への血流が低下すると、逆に上半身への圧力が高まります。また、頚部には椎骨動脈、総頚動脈が
血液供給を担保するのですが、ストレートネックや頚椎症などで、胸鎖乳突筋や板状筋が緊張すると、
これらの動脈が圧迫され、高血圧を発症して、激しい頭痛やメマイ、嘔吐感などを催します。
このようなタイプの高血圧は形には現れにくいものなので、MRIだろうが、血液検査だろうが、すべて
陰性となってしまい、原因不明とされてしまいます。対症的に降圧剤などで処置することになりますが、
意外と鍼灸施術でなら改善することがあるというのは、血管を圧迫する筋緊張を、的確に取り除くことが
できるからです。逆にいえば、どこで血流が阻害されているのかを知ることが出来なければ、どんなに
鍼を施しても効果は薄いということです。つまり、ツボの効果だけを覚えていても、確率以上の意味では
効果が挙がらないということです。


これに圧迫による虚血に対する処置を加えるのですが、まだ不安がある時は井穴刺絡で頭部の血量を
調整したり、手の指の股(水かき部分)に刺鍼します(『八邪穴』)。井穴や八邪は脳梗塞が発症した時に
脳圧を下げるのによく用いられるツボで、後遺症の改善にも有効です。
高血圧の鍼灸治療その後

鍼灸施術後は一時的に血圧が高騰することがあります。これは刺鍼刺激によって交感神経が興奮して
しまい、血管が収縮するためです。施術が上手くいっている場合なら、その後徐々に血圧が落ち着く
のですが、血圧値が200を超えるような場合だと、血圧高騰した際に様々なリスクがあります。
このような場合は、極めて徐々に低刺激で施術するようにしています。
高血圧の漢方薬

まず、体格がよく、便秘がある方の場合なら『大柴胡湯』『防風通聖散』『三黄瀉心湯』などが候補に
なります。イライラや不眠といった精神症状があるなら『三黄瀉心湯』、太鼓腹の重役タイプで、卒中の
傾向がある場合は『防風通聖散』、肩こりや肋骨のすぐ下が緊張しているなら『大柴胡湯』が、
おおよそ適応します。精神症状がある場合でも、臍の上あたりに動悸があり、神経過敏というなら
『柴胡加竜骨牡蛎湯』がよいでしょう。このタイプの方は厳めしい強面でも、根は小心ということが
多いという特徴があります。
同じく便秘型で、下腹部に抵抗や圧痛がある時は、逆上せがあるなら『桃核承気湯』、条件は同様で、
体格が平均的なタイプなら『桂枝茯苓丸』がよいでしょう。どちらも瘀血型です。
また、便秘がない人の場合で、不安感、イライラ、不眠などの精神症状がみられる場合は『黄連解毒湯』
を服用してみるとよいでしょう。
中高年の方で、早朝に頭痛や頭の不快感があるなら『釣藤散』かもしれません。
動脈硬化や卒中の既往者によく合います。


【漢方薬を選ぶ際の注意】
簡易解説を書いておいてこんなことをいうのはよくないのですが、早見表には頼らない方がよいです。
適応症として箇条書きにしてあることもありますが、これもイマイチです。
面倒ではありますが、ちゃんとした漢方店を訪れてください。漢方薬の診断方法は各先生でそれぞれで
すが、キーワードだけで判断するような漢方屋は、基本的に避けた方が無難です。
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