桃核承気湯【西宮・芦屋 鍼灸香春】

桃核承気湯

 

 

桃仁4、大黄・桂枝・甘草・芒硝2

 

 今回は瘀血降しで有名な『桃核承気湯』です。便秘薬としても処方されることがありますが、適応症状が

かなり幅広く、上手に使えると意外な結果が得られる面白い漢方薬です。

 出典は『傷寒論』という漢方の古典書籍で、意外なことに風邪によって派生した症状に使うものとして

紹介されています。風邪によって発生した熱が血中に入って、血内の水分を乾燥させて瘀血を生じます。

その熱が更に腸内へ入って便秘を引き起こしたものを下して解熱させる漢方薬とされます。

 たしかに腸管の熱を降す下剤として使われる『調胃承気湯』に桃仁桂枝を加えたものが本方なので、

風邪からくる腸管の熱を除くという側面が強い漢方だといえます。

 とはいえそんな人は稀ですから、実際には主に慢性の瘀血の方によく使っています。

桃核承気湯の適用

 本方に含まれる「桂枝」「甘草」は気血を巡らせ、「桃仁」「芒硝」で腸内の熱や便秘を下し、「大黄

桃仁」が瘀血を取り除きます。

 腸管の熱が強いために肥満、便秘、胃・十二指腸潰瘍、血尿、血便、肛門周囲炎、痔疾を発生させます。

その熱が上昇すると不眠、逆上せ、蓄膿、鼻血、肩こり、歯痛、歯槽膿漏、頭痛、結膜炎などへ発展し、

体表面へ向かうと蕁麻疹、湿疹、麻疹、掻痒、煩熱、肌のシミ、ニキビなどを生じます。大腸のすぐそば

には生殖器や泌尿器があるため、月経困難、子宮出血、不妊、流産後遺症、前立腺肥大、尿閉を誘発する

ことになります。体内の過剰な熱は精神にも影響を与えるため、ヒステリー、イライラ、譫語、精神不安

動悸などの原因となります。以上のような疾患に本方は適応するため、結果的に打撲の内出血やシモヤケ

水虫、腰痛、坐骨神経痛、冷え症などにも有効です。

 やはり瘀血処置というよりは、腸内の熱による症状に対応する処方だといえそうです。

 桃核承気湯に適応するタイプは腸内の熱が強いため、その熱が上ってしまうと冷え逆上せを発症します。

瘀血もあるので顔色や唇が薄黒く、便秘して月経不順があり、オリモノの色は濃くなります。体格がよく

食欲は過剰気味です。悪寒はありません。これは熱が強いためですね。

 本方は単純に瘀血に使うというのではなく、当院では体内に熱が強いという点に留意して使っています。

逆にいうと冷えによる瘀血では使いにくいということですし、本方が適応する方の不妊症には温めること

が不適切という場合が多いともいえます。ここを間違うと悪化することもあります。あと、不妊の方の

場合は瘀血処理に本方を使うことはありますが、体調管理のためだけで、移植前後などには極力用いて

いません。過去の漢方家の臨床録を読んでも、体質に合ってなければ流産を誘発するとか、特に記述が

あったわけではないのですが、薬効から万一を考えて、私はそうしています。

 より瘀血症状の強い人には『抵当湯』が適応しますが、そこまでの方はあまりお見掛けしません。

便秘がないなら『桂枝茯苓丸』を指導させていただくことが多いので、そちらもご参考にしてください。

 

(『宋版傷寒論』『漢方医学体系(龍野一雄)』『大塚敬節著作集

 『漢方主治症総覧(池田政一)』『薬方愚解(木田一歩)』より)

 

芦屋・西宮 鍼灸 香春(こうしゅん)【JR芦屋徒歩6分】

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