【小腸経兪穴。手の第５中手指節関節尺側の近位陥凹部に取穴する】

　心経のパートナーの小腸経のツボだけあって、熱関係の施術に効果的です。

　体内に発生した熱が、その性質のために上半身へ昇って寝違いやのぼせ、耳鳴り、鼻血などの原因と

なる場合に使われるツボです。その意味で肩こりや五十肩にも使えますし、深く刺せば手の痺れなどにも

有効です。

　『少沢』『前谷』『後渓』の三穴は、細かくいえば性質に違いはありますが、ベクトルとしてはどれも

上った熱を引き下げて治めるといった作用があり、当院でもそのように用いています。

　寝違えの際にご自身で使われる際は、首が曲がらない方の『後渓穴』を使うとよいでしょう。コツは

限界まで首を曲げた上で、本穴を指先で少し強めにマッサージします。

　昔、八木素萌先生という鍼の名人が、後渓穴だけであっという間に寝違えを治したという逸話を聞いた

ことがありますが、普通はまずそう上手くはいきません。

　私では『附分』などの他のツボと組み合わせないと的確な効果を期待できないので、八木先生の鍼は

やはり名人技というべきでしょう。

【主治・効能】

・のぼせによる耳鳴りや鼻血、小指の動かないリウマチ、肘の痛み

・僧帽筋が緊張して首が回らない、前腕や五指の痙攣痛、鼻血、耳聾、角膜炎、間歇熱、癲癇

・寝違え、頭頂痛、指の麻痺や痙攣、癲癇

（『経穴の使い方鍼の刺し方（鍼灸素霊会）』『鍼灸孔穴類聚（松元四郎平）』

　『鍼灸経穴名の解説（高式国）』『鍼灸臨床取穴図解（小野田正、池田久衛）』より）