🍵清暑益気湯(せいしょえっきとう)【ツムラ136】

清暑益気湯

 

 

人参(甘微寒)、白朮(苦温)、麦門冬(甘平)

五味子(酸温)、陳皮(辛温)、甘草(甘平)

黄柏(苦寒)、黄耆(甘微温)、当帰(甘温)

 

 熱中症に使う漢方薬の代表選手といえば本方『清暑益気湯』なんですが、わたしは要注意としています。

 夏バテ熱中症、夏カゼ、夏の下痢などは鑑別が大変に難しく、処方も微妙に異なるにもかかわらず、

先行研究が「傷寒(冷えからの風邪)」などに較べると少なく、病名だけで漢方薬を決めてしまうと

手痛い失敗を被ることになります。

 前回の藿香正気散でも書きましたが、夏の発熱には「によるもの」と「冷えによるもの」が

あります。それは夏の下痢も同様で、黄芩湯人参湯などを使い分けます。もちろん夏バテ

熱中症にもその区別はあります。

 熱中症は基本的に「によるもの」に分類されており、漢方医学では「暑病」と呼ばれています。

水分が足りていない状態ですね。

 夏バテは暑さで水分を過剰摂取して胃腸機能が停滞してしまい、エネルギーが生産できない状態に

陥っています。「湿熱病」と漢方医学では分類され、水と熱が多くなっています。

 同じ夏バテでも、冷房で身体を冷やし、その上に過剰な冷飲食を行うと、一気に胃腸が冷やされて機能

停滞してしまい、やはりエネルギー生産ができなくなっている場合があります。これは「陰暑」と呼ばれ、

前回の藿香正気散などが適応しますが、患者の状態次第では湿熱病にも使われることがあります。

「陰暑」は水気が多くて熱が少ない状態だといえます。

 そして面倒なことに、これら「暑病」「湿熱病」「陰暑」は一見では似たような症状を呈するのです。

舌、脉、症状の程度、発症時の行動を丁寧に見極めれば分類は可能ですが、病名だけでは確率論になり、

不勉強な者では鑑別ができません。

 風邪葛根湯なら効くかもしれませんが、そんな風に楽をしていると、夏の病は治せないのです。

(夏の病については「関西漢法苞徳之会利川鉄漢先生の講義より)

 

 【清暑益気湯の解説】

 では『清暑益気湯』はどのようにして使えばよいのでしょうか。

 まず、本方にはいくつかのレシピがあり、構成する生薬が少々異なっているため、実は効果や適用が

微妙に違っています。中でも代表的な2つの処方を、明治の漢方の大家・浅田宗伯はそれぞれを持病を

ゆっくり治すものと、即効性のあるものとに分けており、ここで紹介している【ツムラ136】は後者に

なります。

 しかし、現代の解説書に眼を通していますと、これらの知識が混同されていることがあります。

これは前段で詳解した「夏の病」が鑑別できていないため、本方の使い方まで曖昧になっているのだと

推察されます。

 そもそも『清暑益気湯』「有所遠行労倦、逢大熱而渇、則陽気内伐、内伐則熱合於腎、腎者水臓也。

今水不能勝火、則骨枯而髄虚足不任」と説明されています。これは遠出して疲労し、熱射病にやられて

咽喉が渇いた状態であるということです。この状態は陽気が体内に籠っているのであり、その熱は身体

深部の腎や髄に入り込んでいます。腎は水を主る臓器ですから、ここに熱が入ってしまうと体温冷却が

できず、熱が過剰になってしまうのです。そのため骨が燻されて枯れてしまい、髄も乾いて足が不自由

になるだと解説されています。このような時に本方で熱を冷まし、エネルギーを回復させるのです。

 本方は慢性肝炎夏バテ下痢に使われるとされますが、以上の文意からすると「暑病」「湿熱病」

による夏バテや、黄芩湯などと同類の熱性の下痢に使われるべきで、「陰暑」による下痢や夏バテに

は厳密には不向きだと思われます。

 

 【清暑益気湯の使い方】

 本方は体内で高まった熱を冷まし、胃腸を調えて消化吸収を扶け、“気(エネルギー)” を供給して

体力を回復する方剤です。そのため、疲労が強く、食欲不振、口渇して冷たい飲み物を好み、手足が

火照ります。小便は黄色く少量、大便は熱量が増えると下痢します。頭からは大いに汗をかきます。

 いわゆる軽度の熱中症の症状が本方の目安になります。

 

 【適応疾患】

・慢性肝炎、夏の慢性肝炎、夏バテ下痢

・食欲異常、暑気あたり、神経痛、手足煩熱、疲労感、寝汗、多汗、甲状腺肥大、痩身

暑気あたり、暑熱による食欲不振下痢・全身倦怠・夏やせ

 

     ※ 夜間に服用すると入眠障害を起こすことがある

 

(『漢方大医典(大塚敬節、矢数道明)』 『黙堂柴田良治処方集(柴田良治、北山進三)より)

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