『外関(がいかん)』【芦屋・西宮 鍼灸香春】

【前腕後面。手関節背側横紋上方2寸。陽池の上方2寸に取穴する】
私が初めて「ツボ」なるものを意識したのが、確かこの『外関』でした。
ちょっと記憶が曖昧になっていますが、確かNHKの番組だったと思います。単身ネパールへ渡海して、
一人で鍼灸学校まで建ててしまったという畑美奈栄先生の特集でした。畑先生はこの時、前腕の麻痺が
ある少年に対し、『外関』『内関』の通し鍼(二つのツボを1本の鍼で貫通させる鍼法)を施術されました。
その時の正直な印象は「治ってないやん」でした。今からすれば、刺鍼技術も私が理想とするものとは
全然違っていて、荒々しく、戦場やスポーツの現場での施術に近く、悪くいうと雑な印象でした。
日本人が日本国内で「治す」というのと、ネパールの無医村でいう「治す」には、ニュアンスに違いが
あって当然ですから、施術方法やそのコンセプトにも相違があって当然というべきでしょう。

私は畑先生に対する敬意は惜しみませんが、前腕部の麻痺は『外関』ではまず治らないでしょう。
筋緊張性の肘の伸屈不能なら有効ですし、手部の麻痺や感覚失脱であれば、これも効果的でしょう。
ただ、前腕部の麻痺であるなら、肘より上を疑うのがセオリーというべきです。例外的に神経切断が
ある場合なら、刺鍼して刺激することで神経の再生が促進される可能性はありますが。
これは鍼灸治療によくあることなんですが、教本に「肘の伸屈ができない時によい」などと書かれて
いたりします。このような一文を「麻痺」と解釈して配穴を考えることがあります。しかし、筋緊張が
強くて曲げ伸ばしができないだけ、という意味にも解釈できます。

「麻痺」なら神経が関与し、疾患部より中枢方向に原因があります。筋緊張は当然「筋肉」に由来する
場合が多く、施術は起始停止を考慮するので、疾患部より末端方向に原因があることもあります。
つまり筋緊張性の不動と神経麻痺は原理が異なるということで、施術や配穴にも工夫が必要になります。
疾患をよく分析して、経穴をどのように運用するのかをよく考慮する必要があるでしょう。

【主治・効能】
・半身不随、耳聾、歯痛、前腕神経痛、書痙(手に物を握ること能わず)
実すれば肘が曲がって伸びないので、瀉する。虚すれば曲がらないので、補う
・頭痛、偏頭痛、外眥痛、耳聾、歯痛、半身不随、寝違え、ムチウチ、頚肩腕症候群、肩こり
五十肩、尺骨神経痛、書痙、低血圧、蕁麻疹、自律神経失調症、下肢外側痛、腹直筋痙攣
・頭痛、半身不随、上肢関節痛、前腕神経痛、発熱、耳病
・頭痛、胸脇痛、耳聾、耳鳴り、聾唖、衂、感冒、熱病、中暑、歯痛、流行性耳下腺炎、頬部腫脹、落枕
高血圧、小児ヒキツケ、上肢の痙攣痛・麻痺、半身不随、腕関節の痛み・無力、手指の腫痛・麻痺など
・腕の使い過ぎで、圧痛がある場合
(『鍼灸経穴名の解説(高式国)』『鍼灸孔穴類聚(松元四郎平)』
『経絡経穴の近代的研究(濱添圀弘)』『鍼灸臨床取穴図解(小野田正、池田久衛)』
『鍼灸集錦(鄭魁山)』『経穴の使い方・鍼の刺し方(鍼灸素霊会)』)


