🍵藿香正気散(かっこうしょうきさん)【クラシエ】

 

 

大腹皮(辛温)、紫蘇葉(辛温)、陳皮(辛温)、桔梗(辛微温)

厚朴(苦温)、藿香(辛温)、大棗(甘平)、茯苓(甘平)

白朮(苦温)、半夏(辛平)、白芷(辛温)、甘草(甘平)、生姜(辛温)

 

 本方は漢方の解説書でもあまり取り上げられることのない方剤ですが、夏カゼの薬としては外せない

漢方薬になります。『黙堂柴田良治処方集』には、感冒の他にも夏バテ下痢、月経痛、小児神経症、

中暑の吐瀉などに効果があるとされています。

 一言でいえば夏カゼの薬なんですが、夏の体調不良に広く応用できます。とはいえ、夏カゼの分類は

難しく、まずベースとなる体調不良に大きく2つのパターンがあることが重要になります。

 

 【夏の発熱の分類】

 細かくは「疾患解説」を参照していただくとして、大まかには以下の2種類に鑑別されます。

 

①.熱によるもの

  熱射病などが該当しますが、身体に熱が溜まり過ぎ、発汗しても追いつけない状態です。急速に

 身体を冷却する必要があるため、水や氷で身体を冷やし、給水させて安静を心掛けます。症状が

 ひどい場合は迷わず救急車を呼ばなければいけません

  身体が熱く、体温も高く、ノドが渇き、脈も浮いて強く早く鼓動します。

 

②.冷えによるもの

  暑いからといって、海水浴やよく冷房の効いた部屋で、冷たい飲み物やアイスクリームなどを

 食べ過ぎて起こすのが、こちらのパターンです。

  症状としては、多少の発熱があったり、ぐったりしていたりと熱による場合と似ている部分も

 ありますが、水を飲みたがらず、脈は弱々しくなっていることが一般的です。

  急に冷やしたことが原因で、胃腸の機能が低下してしまい、エネルギーの循環と供給が停滞して

 いる状態です。胃腸の機能を回復させるため、お腹を温めることが必要になります。

 

 【藿香正気散の病理】

 本方は②の冷えによる場合によく用いられる漢方薬です。そのため、生薬は「温」の性質を持った物を

多用しています。また、機能停滞により循環も悪くなっているため、「辛」の生薬も多く配置されます。

つまり、胃腸機能が停滞して発散ができていない状態『藿香正気散』は用いられます。

 胃腸が冷えているため、本来胃にあるべき熱はその経絡である陽明胃経を遡り、面部へ集まります。

そのため、唇は赤くなりますが、これは呉茱萸湯と同じ原理です。

 

 胃腸などの消化器を東洋医学では「太陰(タイイン)」と呼びますが、「太陰」は同時に気血の循環を担当

します。「肺」と「脾」が分類され、「太陰」の機能が低下すると消化吸収とそのエネルギーの循環に

支障を来たします。エネルギーが正しく循環することで、皮膚は発汗し、体内の余計な熱を排出します。

こうした一連の生理的な動きを「発散」と呼びます。実際に「発散」を担当するのは「太陰」の表である

「陽明(ヨウメイ)」の役割ですが、「太陰」が停滞すると「陽明」も連動して動作不良を起こすのです。

 本方は「温」の生薬で「太陰」の脾胃を温め、消化吸収を扶けて気血(エネルギー)の循環を促し、

「辛」の生薬で「陽明」からの発散を活性化して、身体の内外の冷えを払拭します。

 逆に①のパターンの熱や夏カゼに本方を用いると、悪化する可能性があります。また、類似処方の

呉茱萸湯を用いた場合、脾胃の冷えには対処できても、発散を促す力は弱いので、海水浴や冷房に

よる外表の冷えには効力が薄く、思うほどの効果が期待できないでしょう。

 

 【藿香正気散の使い方】

 悪寒、発熱があり、熱が陽明経を遡って頭へ至るため頭痛があります。胃腸が冷えているため、

下痢、腹痛、食欲不振を呈します。場合によっては冷えによる痰飲のために嘔吐し、エネルギーが

不足して元気がありません。発熱はそこまで高熱ではないことが一般的です。

 【適応疾患】

・発熱、悪寒、頭痛、嘔吐、下痢

・夏の感冒熱中症+頭痛や発熱、急性胃腸炎+嘔吐・下痢、産前産後の神経性腹痛や浮腫

 小児の過食性咳嗽、眼疾、歯痛、咽喉痛

感冒、夏の下痢夏ばての下痢、産前産後の浮腫、月経痛、小児神経症、中暑の吐潟

・発熱、悪寒、頭重、頭痛、身体倦怠感、胸苦しい、腹満、腹痛、悪心、嘔吐、下痢

 

(『中医臨床のための方剤学(神戸中医学研究会)』 『漢方主治症総覧(池田政一)』

 『黙堂柴田良治処方集(柴田良治、北山進三)より)

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