🍵芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)【ツムラ68】

芍薬甘草湯

芍薬(苦平)、甘草(甘平)


【芍薬甘草湯の病理】
生薬の構成を見て分かるように、本方は「甘草」「芍薬」の二つの生薬で作られている漢方薬です。
「甘草」で筋肉を緩め、「芍薬」で血液循環を促して、血液供給が不足することでミネラルの補給が
受けられずに引き攣りを起こしている筋肉を潤す作用があります。
単純に貧血などの血液不足(血虚)であるなら「当帰」あたりも処方に含まれている筈ですが、
それがないということは、体内に水や血液が不足しているというわけではなく、その循環が上手く
できていないことが原因の筋痙攣によいと推測できます。
これを東洋医学的に考えると、肝(血虚)よりも脾(停滞)によるトラブルだということになり、
「脾虚証」のグループに分類されます。

脾と肺は「太陰(タイイン)」に所属し、体内、体外の循環を管理しています。血液循環や呼吸による
“気” の巡りなどはこの「太陰」がリーダーとなって指示し、運営されています。この巡らせる力が
足りていないものを「脾虚」「肺虚」といいます。
つまり本方はどちらかというと「太陰脾」の作用を助ける薬方だというわけです。
ただ、理論的にはそうでも、実際には「血虚」タイプの筋痙攣にも効果はあるんですが。

【芍薬甘草湯の使い方】
先にも書きました通り、本方には問題を本質的に解決する力はほぼありません。対症療法的に筋肉の
緊張を和らげることに特化した漢方薬です。なので、そのように用いるのが最も効果的です。多くの場合、
頓服的に使います。逆にいうと「予防的には効果がない」ということだと、私も思ってはいたんですが、
本方をおすすめした患者の方から話を聞いていると、服用してから寝るとこむら返りが起きにくいという
方が大勢おられました。プラセボかもしれませんが、予防にもいくばくかの効果はあるのだと思われます。

【適応疾患】
単純な筋痙攣としてはヒキツケや腰痛、こむら返り、筋肉痛によく効きます。また、過度な筋緊張が
痛みの原因となっているものに応用して、坐骨神経痛や肋間神経痛などの神経痛、肩こり、胃痙攣、
関節痛などに効果が見込まれます。
他にも直接の効果は見込めないものの、痛みの緩和という意味で使えるのは胆石や膀胱結石、腎結石、
虫垂炎、月経困難、子宮収縮などでしょう。筋肉を弛緩させることで疼痛を緩和するわけです。
もし引き攣りや痛みに冷えを伴うような場合や発汗を促す必要がある場合は本方に「附子」を加え、
『芍薬甘草附子湯』として服用するのがよいでしょう。「附子」は強力に身体を温めてくれますから、
首肩こりや関節痛にはこちらの方がよいことも多く見られます。
坐骨神経痛のようなひどい神経痛の場合は、更に「大黄」を加え『芍薬甘草合大黄附子湯』とし、
腸内~骨盤内腔の熱を排除して痛みを収めるのがよいでしょう。
(『漢方医学体系(龍野一雄)』『漢方常用処方解説(高山宏世)』
『大塚敬節著作集』『中医臨床のための方剤学(神戸中医学研究会)』
『漢方主治症総覧(池田政一)』より)
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