
【心経。前腕内側。手関節掌側横紋の上方5分、尺側手根屈筋腱の橈側縁に取穴する】
手首の小指側部分、つまり空手チョップをする側には『霊道』『通里』『陰郄』『神門』の4つのツボが
並んでいます。手のひらと前腕の境目が『神門』ですから、そこから5分遡った所が本穴となります。
『陰郄』は動悸や寝汗、心臓部痛、不眠、咳などに効くとされます。これらの原因は「虚熱」という、
生命活動の副産物として生産される廃熱によるものです。よく食べる人なら脾胃などの消化器系、
イライラしがちな人は自律神経ですから肝、加齢や熱中症によるものなら腎からの「虚熱」になります。
この「虚熱」が胸に集まると動悸や不眠、寝汗、心臓部痛となり、咽喉に集まると咳となるのです。

つまり、肝からの虚熱による心臓部痛であれば、心経に属する『陰郄』は効果が小さいということに
なります。この場合は、肝や厥陰肝経、表裏関係にある少陽胆経、同じ厥陰経の心包経、少陽経繋がりで
三焦経などに影響が波及していることが多いので、これらの経絡を処置することが一般的です。
同じ心臓部痛であっても、原因となる経絡の不調を考慮して施術プログラムを組むのです。

その意味でいうと、『陰郄』で効果のある動悸や不眠は、心の陰液が減衰したことによる「虚熱」が
影響した場合でしょう。胸部の熱となっているので、適当に用いても少しは効果があると思われますが、
ここはやはり病理を理解して用いた方がよいと思われます。
ちなみに「心の陰液」は同じ少陰経の腎から供給されているので、この場合は大抵腎虚証となって
いることが多いです。つまり腎陰が少陰経を通じて心へ供給されていない時にこそ、本穴を用いて動悸や
不眠を改善できるというわけです。

【主治・効能】
・失音、振寒、盗汗、胸満などを、瀉法にて疎通させて治する
・心内膜炎、心胸絞扼痛、急性舌骨筋麻痺・萎縮、肘関節炎、乾嘔、ジフテリア、衂血、吐血
酒淅畏寒、厥逆、気驚、心痛
・心悸亢進、狭心症、心臓炎、頭痛、眩暈、眼球充血、衂血、吐血、月経過多、子宮出血
尺骨神経痛・麻痺
・寝汗、心臓動悸
・心窩部痛、心悸亢進、失眠、盗汗、乾咳、吐血など
(『鍼灸経穴名の解説(高式国)』『鍼灸孔穴類聚(松元四郎平)』『鍼灸集錦(鄭魁山)』
『経絡経穴の近代的研究(濱添圀弘)』『鍼灸臨床取穴図解(小野田正、池田久衛)』
『経穴の使い方・鍼の刺し方(鍼灸素霊会)』)
芦屋・西宮 鍼灸 香春(こうしゅん)【JR芦屋徒歩6分】