『三陰交(さんいんこう)』【芦屋・西宮 鍼灸香春】

【脾経絡穴。下腿内側。内果尖上方3寸、脛骨内縁の後際に取穴する】

 おそらくもっとも有名なツボの一つ『三陰交』が今回のテーマです。その名の示す通り、足の三陰経

(脾・腎・肝経)が交わるポイントです。そのため、不妊治療でよく用いられ、禁鍼穴とされています。

これは例えば『鍼灸聚英』という本では、「陰」は血、「陽」は気を意味するため、三陰経が会合する

『三陰交』は優しく扱い(補)、対になる陽経の大腸経『合谷』は少し粗雑に扱って(瀉)、バランスを

取るのがよいと紹介されています。鍼は基本的に「瀉」の属性ですから、こうした陰陽の扱い方をベースに

して、本穴は瀉さない方がよい、つまり鍼は不適であるとされるわけです。

 

 ただ、こうした理屈にも異論はあるもので、正直、鍼を刺した程度では流産を誘発したりはしません。

どちらかというと、禁鍼穴であるという話が有名になり過ぎたため、妊婦や妊娠希望者のメンタルヘルスを

慮っての忖度であるという面はぬぐえません。

 鍼灸の学生時代に大林先生という女性の老鍼灸師(当時80歳以上)の方にお話を伺った際、昭和の時代に

『三陰交』『肩井を用いて堕胎処置を施していたそうです。その際、患者が叫び出すほどの刺激を与えて

いたと仰っておられたので、まあ、それくらいやらないと流産には至らないのだろうと思われます。

 

 ではなぜ『三陰交』に流産の作用があるとされているのでしょうか。流産のみならず、高血圧(特に

本態性高血圧の一部)にも極めて効果的です。こうした、下方向への力を働かせるのは、下腿の内側に

ある後脛骨筋が関与しているものと思われます。正確には長趾屈筋や長母指屈筋など、似たような走行を

取るいくつかの筋肉です。

 

 これらの筋肉は、下腿内側で、脛骨(向こう脛)の際を走行します。このラインがちょうど脾経にあたる

のですが、『三陰交』周辺でよく硬くなっています。これは筋肉、神経、血管の動きが悪くなっており、

癒着したような状態になっているため、血行不良を起こす原因となっているのです。この癒着状態を鍼で

深く刺して解消することで、滞っていた血流を一気に押し流して、循環を改善して高血圧を解消、または

堕胎を誘発するのだと思われます(関西漢法苞徳之会・会長大西宏治先生講義より)。

 

 古典鍼灸といえば、魔法のように不可思議な世界と思われがちですが、それは「陰陽虚実」によって

さまざまなものを分類して理論化し、説明可能なものにしようとするからです。2000年前の当時は

科学が未熟で、解剖も不十分、生理も未解明なままで、あらゆる病に立ち向かわねばならなかったため、

不足があっても体系化して応用し、後世に伝える必要があったのです。

 しかし、人体に施術するという意味では西洋も東洋もなく、太古の昔でも今現在でも同じです。本当に

効果のあるツボや施術には、人間の摂理に適う意味や理由があるのです。

 

【主治・効能】

・血分と関係のある三陰経に属する症状に用いる。当帰のようなもの。
 経血、胎産・子宮、精室と関連する諸証に用いる

・慢性胃病、食欲↓、消化不良、胃酸↑、腸疝痛、下痢、特発コレラ、四肢病

 月経過多、子宮出血、交接過度、胎動横産後の諸病

・婦人科疾患、生殖器疾患を主る。月経不順、子宮出血、胎動、横産、遺尿、陰萎

・血暈して人事不省となるような、経脉巡らざるものには、本穴を補う
・月経閉止、子宮充血などのような経脉閉塞して通じざるものには、瀉して血気を通じる

食欲↓、消化不良、胃酸↑、腸疝痛、下痢下腹部厥冷、下腹鼓脹、腎疾患
 尿道炎、四肢倦怠、下肢厥冷、下肢内側頭痛、湿気下し

不眠、脱腸、消化不良、遺精、泌尿器系の病、月経痛、引産、乳汁過少
 こしけ、子宮下垂、半身不随、腹の張り、下腹痛

・心窩部痛、腹脹、消化不良、腸鳴、溏泄、黄疸、消渇、眩暈失眠、インポテンツ、滑精
 疝気、遺尿、血尿、小便不利、水腫、蕁麻疹、陰部腫痛、神経衰弱、高血圧、癥瘕、月経痛
 閉経、子宮出血、帯下、月経不順、子宮脱、後産困難、下肢の腫痛・不随、脚気など

足首から先の冷え。婦人科疾患には施灸5~7壮。妊娠中の病気や下肢浮腫の予防、子宮内膜炎

(『鍼灸孔穴類聚(松元四郎平)』『経絡経穴の近代的研究(濱添圀弘)』

 『鍼灸臨床取穴図解(小野田正、池田久衛)』『鍼灸集錦(鄭魁山)』

 『鍼灸経穴名の解説(高式国)』『経穴の使い方鍼の刺し方(鍼灸素霊会)』)

               芦屋・西宮 鍼灸 香春(こうしゅん)【JR芦屋徒歩6分】

\ 最新情報をチェック /

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です