『養老(ようろう)』【芦屋・西宮 鍼灸香春】

 【小腸経。前腕後内側。尺骨頭撓側の陥凹部。手関節背側横紋の上方1寸に取穴する】

 腕部の疾患に使われるツボ、小腸経『養老』を紹介します。

 「養」はそのまま養うの意味ですが、「老」は老いるの意味の他に「大事」の意味もあります。

つまり、衰えを回復する大切なツボという意味でしょう。そのため、鍼よりは灸で温めるのがよいとされ、

耳鳴り視力低下のような老化現象に効果があるといわれます。

 また、小腸経のツボですから、消化器系の内熱による口中糜爛(口の中が荒れる症状)やデキモノ

皮膚トラブルなどにも用いられます。

 

 【当院での経験】

 いつも使うというわけではないんですが、予約されていた患者の方が、たまたま今朝寝違えしたという

ので、本穴を用いたことがあります。

 寝違えというか、午前に事務仕事をしてから「背中のスジが引き攣って痛む」らしく、疲労回復を兼ねて

施術する流れとなりました。

 位置は肩甲骨の間で、左背筋のラインにあたる起立筋のやや外側、ツボでいえば『厥陰兪』『心兪』

『膏肓』の間あたりでした。筋肉でいうと最長筋~腸肋筋、または菱形筋のあたりと思われました。

 最初は膀胱経の異常と考えて『玉沈』『天柱』『崑崙あたりを施術していましたが、効果が悪く、事務

仕事をしていたこと、『心兪』近辺の変調であることから、心経の表にあたる小腸経『養老』を選穴して

みました。

 今回は補うことが目的ではないので、少し深めに刺鍼して、ずーんと響きを感じて貰いました。同時に

同じ小腸経の後渓で頚と肩を弛ませると、背中の痛みは治まったとのことでした。

 小腸経には肩甲骨の真上に位置する『天宗』『曲垣』や肩甲骨の内側にある『肩外兪』『肩中兪』が配置

されていますから、後渓『養老』で頚と腕を調整すればよいだろうと思っての選択でしたが、私の

予想以上の結果が得られて驚かされました。

 これは別に不思議なことではありません。前腕の筋肉が不自然に緊張すると肘の位置がおかしくなり、

そのために上腕骨が内・外旋してしまうため、二頭筋や烏口腕筋などの筋肉によって肩甲骨の位置異常を

誘発します。その結果、肩甲挙筋や菱形筋などが必要以上に緊張して寝違えを発症したのでしょう。

…多分ですが。

 東洋医学はこのようなメカニズムを経絡として説明し、それを五臓六腑の働きと関連させているのです。

 

【主治・効能】

・痺れ、眩暈、目黄、肩痠痛など。灸がよい

視力欠乏、眼球充血、肩甲~前膊部の慢性疼痛・麻痺

・頭痛、めまい耳鳴り視力欠乏、眼球充血、面疔、疥癬、頚肩腕症候群、尺骨神経痛・麻痺

肩・背・肘・腕のだるさ・痛み、寝違え、腰痛

・口腔糜爛、濃小便+尿量↓、麻痺無力、落沈、肩腕痠痛、手の痠痛など

(『鍼灸孔穴類聚(松元四郎平)』『鍼灸経穴名の解説(高式国)』

 『鍼灸臨床取穴図解(小野田正、池田久衛)』『鍼灸集錦(鄭魁山)』

 『経絡経穴の近代的研究(濱添圀弘)』)

芦屋・西宮 鍼灸香春(こうしゅん)【JR芦屋徒歩6分】

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