『極泉(きょくせん)』【芦屋・西宮 鍼灸香春】

【心経。腋窩部。腋窩中央。腋窩動脈拍動部に取穴する】
神経の経脈が湧き出る所ということで『極泉』という名前を与えられたのが本穴です。
心経は動悸など、心の疾患にもよく使われますが、精神的な病にもよく用いらる経絡です。『青霊』
『少海』『霊道』などはノイローゼや神経衰弱、場合によっては発狂などにも対応しています。
しかしながら『極泉』はわずかにヒステリーを主治する程度で、主に正中神経や尺骨神経のトラブルを
解決するツボと定義されています。
これは解剖学的に正中神経、尺骨神経の走行が腋窩から直接に狙いやすいということで、逆にいうと
運動神経、感覚神経へのアプローチ適性が高すぎて、精神神経系の疾患に使わなくなってしまったため、
その効果が意識されていないのかもしれません。

【当院での経験】
手に力が入らず、物を摘まむことができないという方を施術した時の話ですが、これは拇指対立運動障害
といって、正中神経という腕の神経が圧迫されて麻痺している状態です。同時に血管も圧迫されているため、
母指球が痩せてくるという特徴があります。この方の場合は、疾患が発症してすぐだったため、筋肉が
痩せるようなことはまだなく、拇指と示指で摘まむ、または腕で身体を支えるという作業がしにくいとの
ことでした。鉛筆を持ったり、細かい作業をこなしたりという、親指を使う行動が上手くできず、困って
おられました。

正中神経麻痺は多くの場合、手根管部で神経が圧迫されています。手根というのは手首~掌の付け根辺り
一帯を指し、ここは筋肉や神経、血管が多く通過します。それらを安定させるため、靭帯がバンドのように
巻かれています。これを屈筋支帯といいます。
この屈筋支帯の締め付けがきつくなって神経や血管を圧迫して、本疾患は発症するのです。また神経炎や
脂肪腫が原因となることもあります。

結論からいいますと、『極泉』は効果がありませんでした。
正中神経障害なので、まずはと思って本穴をとって、少し響かせる程度に刺鍼したんですが、効果を
感じることは、ほぼありませんでした。治療自体は4回で終了したのですが、『極泉』が効いたといえる反応
はありませんでした。むしろ、直接屈筋支帯を狙っての手根管への鍼と知熱灸、円回内筋~橈側手根屈筋へ
の鍼と知熱灸の効果が大きく、対立運動の大幅な改善を確認できたため、4回で一旦施術を終了としました。

ただ胸郭出口症候群のケースでは、著効とはいえないまでも、一定の効果がありましたから、正中神経と
いっても肩~上腕にかけての障害があるような時に効果があるのかもしれません。とはいえ、巻き肩処置の
方が効果がありましたが。

【主治・効能】
・心痛、干吐、四肢不収、臂肘寒痛、脇満、目黄、悲煩、本経局部及び血液の変化に拘る諸症を治す
・心臓炎、肋間神経痛、乾嘔、ジフテリア、四肢厥冷、尺骨神経痛、腋臭には放血するとよい
・心疾患、肋間神経痛、胸膜炎、尺骨神経痛、正中神経痛、五十肩、四肢厥冷、ヒステリー、乾嘔、腋臭
・心窩部痛、脇痛、乳汁分泌↓、前腕の冷え・痛みなど
(『鍼灸経穴名の解説(高式国)』『鍼灸孔穴類聚(松元四郎平)』『鍼灸集錦(鄭魁山)』
『経絡経穴の近代的研究(濱添圀弘)』『経穴の使い方・鍼の刺し方(鍼灸素霊会)』)
芦屋・西宮 鍼灸 香春(こうしゅん)【JR芦屋徒歩6分】


