
【胆経。頚部。乳様突起の後下方の陥凹部に取穴する】
「完」という言葉は完全無欠を意味します。そして人間にとっての最重要部位である「脳」が鎮座
するのが「頭」です。その「頭」部を防衛している頭蓋骨の重要拠点が本穴で、堅固であることを
要求される部位でもあります。その意を受けて『完骨』と名付けられたようです。
そのため、脳充血やメマイ、メニエール病、耳鳴り、言語不明など脳や頭部の器官に関与するような
疾患に有効とされます。また同時に、頸の胸鎖乳突筋の起始部でもあるため、頚肩腕症候群や寝違え、
首こり、肩こりなどの運動器が関与する疾患にも効果的です。

胸鎖乳突筋はかなり強力な筋肉で、首を竦めるような動作や噛みしめをする時などに作動します。
寝ている時に歯軋りをして肩がこる、という方はここが緊張していることが多くあります。
肩こり以外にも首猫背の原因にもなりますし、斜角筋と共同して頚肩腕症候群を発症します。また、
胸鎖乳突筋の強度の緊張によって椎骨動脈や頸動脈を圧迫するリスクが考えられます。そのために
高血圧や逆上せ、虚血性の耳鳴り、難聴、頭痛、視力低下、眼精疲労などの眼や耳の疾患を誘発する
ことがあります。

当院では、強度の首肩こりや頚部の回旋不全(振り返りができない)、難聴やメマイ、逆上せなどに
用いています。ただ、頚部が過敏になっていることがあるため、一時的に悪化することもあります。
ただ、この場合は神経の興奮であることが多いので、ゆっくり休養を取ることで、反って症状は
施術前より改善するケースが大半です。

【主治・効能】
・口歪面腫、頭項揺、牙関緊閉、歯齲、目眩・癲疾、頭風などを治する
・頭項部の痙攣、顔面浮腫、口裂筋萎縮、言語不正、歯齦炎、扁桃腺炎、歩行難、癲癇、脳充血には瀉血
・脳充血、癲癇、頭痛、偏頭痛、頚肩腕症候群、寝違い、ムチウチ、顔面浮腫、顔面神経痙攣
三叉神経痛、耳疼痛、耳鳴り、歯痛、眼疾患、言語不能、眩暈、メニエル病、耳下腺炎
・頭痛、耳後痛、顔面浮腫、咽喉腫痛、顔面神経麻痺、頚項部の強張り、失眠、網膜出血、視神経萎縮
(『鍼灸経穴名の解説(高式国)』『鍼灸孔穴類聚(松元四郎平)』
『鍼灸集錦(鄭魁山)』『経絡経穴の近代的研究(濱添圀弘)』
『鍼灸臨床取穴図解(小野田正、池田久衛)』)
芦屋・西宮 鍼灸 香春(こうしゅん)【JR芦屋徒歩6分】