🍵加味逍遙散(かみしょうようさん)【ツムラ24】

加味逍遙散

 

 

当帰(甘温)、芍薬(苦平)、茯苓(甘平)、白朮(苦温)、柴胡(苦平)

甘草(甘平)、牡丹皮(辛寒)、山梔子(苦寒)、生姜(辛温)、薄荷

 女性の不調、特に更年期障害に使われるのが『加味逍遙散』です。ただ、更年期障害だからといって

なんにでも本方を用いるというのは間違いだというのは、他の漢方薬と同じです。思い当たるものだけ

でも温経湯』『清心蓮子飲』『桂枝加竜骨牡蛎湯』『柴胡加竜骨牡蛎湯』『抑肝散』『当帰芍薬散

『柴胡桂枝湯』などが適応しますし、応用的に黄連解毒湯』や『四物湯』『甘麦大棗湯』『甘草瀉心湯

なども候補に挙がります。

 これらを病名 ⇒ 症状 ⇒ 病理、と絞り込んで最終的にあなたに適応する漢方薬、ツボを判断するのです。

 

 【加味逍遙散の病理】

 出産や流産、労働などによって疲労がたまっている方、特に女性に用いられます。東洋医学的に、疲労

しているという状態は「血(ケツ)」を消耗している状態で、これを「血虚」といいます。血は水分ですから、

水を失った身体は冷却されず、自然と熱を持ってしまいます。これを「虚熱」といいます。パソコンを

使っていると熱くなってくるのと同じです。廃熱みたいなものです。

 この虚熱が上半身へ上って動悸、胸苦しさ、咳嗽、頭痛、不眠めまい肩こりとなり、胃腸に入ると

便秘胃腸不良、下半身へ赴けば小便がすっきりと出ず、膀胱炎のような症状を誘発する原因となります。

 こうした血虚を原因とする虚熱による諸症状+精神不安に用いるのが本方です。

 

 【加味逍遙散の使い方】

 本方は更年期障害に使うことの多い漢方薬ですが、どちらかというとイライラしてヒステリーを起こす

タイプに用いられます。鬱っぽくなったり、クヨクヨするなら『半夏厚朴湯』『温胆湯』『甘麦大棗湯』

などが適応します。

 また主要なサインとして、愚痴っぽく、主訴が多いという特徴があります。「血」が消耗されて不足し、

精神を養えないため不安感があってイライラするため、どうしても他人へ訴えることが多くなってしまう

のです。ノイローゼ気味になって、万事が気になって仕方ないという方にもよく奏功します。

 

 【当院での経験】

 あれも辛い、これもしんどいと仰る女性がみえられたことがあります。顔を見るとすごく落ち着いた、

温和そうな感じの方でしたが、家庭でのストレスが激しいようで、すごくイライラするとのことでした。

 主訴は首スジの痛みだったのですが、頭痛もあり、やや便秘気味で不眠傾向があるというので、

これは典型的な加味逍遙散証だな、と思って診察を始めました。

 本当に加味逍遙散が適用する場合なら、脈は少し浮いているくらいでやや細くて硬い感じになる筈と

予想していましたが、診てみると脈はやや沈み、奥の方で硬くなっている感じでした。これはただの血虚

から、「血」の製造元の脾胃にまで病が及んだ状態で、すでに小柴胡湯の適用になっていました。

 この『小柴胡湯』『加味逍遙散』は少し病のベクトルが違うというだけで、本質は似ているのです。

加えていうと『小柴胡湯』補中益気湯も虚実の違いなので、この三方は同質の方剤だといえます。

 ただ、同質とはいっても『加味逍遙散』は「血」に由来する状態に使い、『小柴胡湯』は消化器に由来

する状態に用いますから、漢方なら大きな間違いにはならなくても、鍼灸では使うべき経絡が完全に

異なります。『加味逍遙散』は肝経、『小柴胡湯』は脾経がメインです。

 症状だけを見て、短絡的に加味逍遙散だとしていたら、患者の方に迷惑をかけてしまう所でした。

脈診というものはこういう時に患者と我が身を救うものなのだと、実感させられた出来事でした。

 この方の場合、頚部痛はすぐにとれたのですが、それで終了となってしまいました。この頚部痛も

筋肉の引き攣りですから、ストレスからの血の不足が関与するので、本当はあと数回は施術をしたかった

のですが、仕方ありませんでした。少し心残りとなった経験です。

 

 【適応疾患】

 疲労による血虚から発生した虚熱が、上半身へ行けばめまい、頭痛、不眠肩こりなどの原因となり

ます。胃腸にはいれば便秘胃腸不良、下半身へ向かうと膀胱炎月経不順、不妊などを誘発します。

髄(身体中枢部)にまで影響を及ぼすと、イライラノイローゼ、自律神経失調症となり、体表へ浮き

出ると手足ほてり倦怠感、口内炎湿疹などの遠因となります。

こうした更年期一般に見られやすい症状を手広くカバーするのが本方の特徴です。

 ただ、皮膚の痒みシミ手荒れがひどい(指掌角化症)などの場合は、四物湯と合わせて

『加味逍遙散合四物湯』とした方がよいこともあります。

 

 (『漢方医学体系(龍野一雄)』『漢方常用処方解説(高山宏世)』

 『大塚敬節著作集』『中医臨床のための方剤学(神戸中医学研究会)』

 『漢方主治症総覧(池田政一)』より)

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