『維道(いどう)』【芦屋・西宮 鍼灸香春】

【胆経。下腹部。上前腸骨棘の内下方5分に取穴する】

 下腹部というか、鼠径部にあるツボです。

 本穴の主治症としては腰痛、股関節、下肢の疼痛などが主となりますが、面白いことに生殖器・泌尿器

疾患淋疾、睾丸炎、膣炎などにも有効とされています。つまり骨盤内腔を温める作用があるということで、

当院では冷え症にもよく用います。これは本穴の位置する鼠径部の周辺に内・外腸骨動脈やその枝となる

血管が集中しており、臀部、陰部、骨盤内臓器、下肢への血流を担っているからです

 これらの血管や神経が腸骨筋、大腰筋の緊張で圧迫されて血流が滞ると痛み、痺れ、冷えなどを発症

します。特に鼠経靭帯の緊張は大腿神経や大腿動脈を圧迫しやすく、よく下肢症状の原因になっています。

 こうした腸骨筋や大腰筋の緊張が著しい方は、特徴的に鼠径部が硬く盛り上がり、圧迫されるのを

ものすごく嫌がります。下肢の冷え坐骨神経痛腰痛、歩行不全、姿勢維持困難などで困っておられる

方によく見受けられます。

 『維道』はその腸腰筋の緊張を除くのに有効なツボです。

 

 【当院での経験】

 当院では『維道』は比較的よく使うツボです。浅めに刺して鼠経靭帯を弛めるともあれば、深く刺して

奥にある腸腰筋を狙うこともあります。

 最近では、下腹部の冷えと腹痛があるという女性に用いました。お話をよく伺うと、お腹は冷えると

痛むのですが、どうも特に冷えがきついのは内股のようなので触診してみると、案の定、大腿部が凹んで

冷えていました。これは大腿への血液供給が不十分だということなので、外腸骨動脈から大腿深動脈の

どこかで狭窄があるためだろうと推測しました。

 反対に鼠径部が硬く緊張して少し隆起し、圧迫すると顔をしかめて嫌がるので、犯人は鼠経靭帯と

腸腰筋だろうと診立てました。

 経絡的にいえば肝経、脾経あたりですから、太衝』『太白で下肢内側を十分に緩めた上で、

五枢』『維道』を浅刺して鼠経靭帯を弛めてから深刺して腸腰筋を狙うのですが、ここはずーんと

重い響きを感じる所であり、皮神経にあたれば電気が走ったような痛みを感じる部位でもあるので、

慎重に刺入します。深めに刺して筋繊維を鍼に絡めるようにしてゆっくり引き上げて抜針します。

 これに本治法と、頚、膝、腰の3~4カ所の局所療法を合わせただけの施術でしたが、太腿が

温まるのを実感して帰っていただけました。打鍼を使うのもいいかもしれません。

 この方は、所謂ガニ股で腰を落としたような姿勢、腰と首もしんどいと仰っていたので、腸腰筋の

緊張はかなり強く、慢性的だと診て取れます。また、このままでは近い将来に膝も痛めてしまう

でしょうから、そのあたりも含めて長期のメンテナンスが必要なるかと思われます。

 

 【主治・効能】

・水腫、三焦不調、不嗜食、嘔逆などの症を治す。

腰痛、腹筋痙攣、睾丸炎、坐骨神経痛、水腫、腎臓炎、嘔吐止まずに食を嗜まず。肋間神経痛

腰痛、下肢疼痛一切、胃疾患(胃潰瘍、胃炎など)、腸疝痛、淋疾、睾丸炎、膣炎、赤白帯下

 生殖器疾患(子宮後屈など)、泌尿器疾患(尿道炎、膀胱炎など)

・腰部・股関節の痠痛、疝気、水腫、大腿の痛み・麻痺など

 

(『鍼灸孔穴類聚(松元四郎平)』『経絡経穴の近代的研究(濱添圀弘)』

 『経絡経穴の近代的研究(濱添圀弘)』)『鍼灸経穴名の解説(高式国)』

 『鍼灸集錦(鄭魁山)』『慢性病の漢方・鍼灸療法(藤平健ほか)』)

 

芦屋・西宮 鍼灸 香春(こうしゅん)【JR芦屋徒歩6分】

 

芦屋・西宮 鍼灸香春(こうしゅん)【はり灸専門】

芦屋市大原町の鍼灸院。JR芦屋駅より徒歩6分。東洋医学(鍼灸、漢方)で、首コリ、肩コリ、五十肩、腰痛、ぎっくり腰、膝痛、季節の不調、自律神経失調症、頭痛、耳鳴、めまい、鬱、不眠などに対応します。芦屋、西宮、東灘、灘区、神戸、宝塚などで鍼灸院をお探しの方へ。

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