🍵甘草瀉心湯(かんぞうしゃしんとう)
甘草瀉心湯
甘草(甘平)、黄芩(苦平)、乾姜(辛温)
人参(甘微寒)、黄連(苦寒)
大棗(甘平)、半夏(辛平)
ただ、臨床的にはストレスなどで交感神経が興奮し、胸に熱がこもることから動悸や不安、焦燥感などを
感じ、不眠症になることがあります。その熱が咽喉に支えるため、痰が絡んだように咽喉に違和感を感じ
ます。いわゆる梅核気ですね。また、交感神経の興奮は食欲不振を招き、消化機能も低下させるため下痢を
引き起こし、グルグルと腸鳴を鳴らせます。また胃腸機能の低下とストレスが重なることで、食物の臭いを
嫌うという傾向が見られたりもします。
こうしてみると心熱があるものの、胃腸はエネルギーを失って虚となり、冷えを起こしているようにも
見えますが、心熱は表裏関係から小腸の熱となって膀胱炎や尿道炎、血尿などを誘発することもあります。
脈も熱のある強い脈ではなく、弱々しく鬱屈したような脈で、ここで自分の間違い気づきました。これは
『甘草瀉心湯』証だと。
この方の場合、テキパキした性格もあって、日々の心配事や仕事などの心労が重なっていたのでしょう。
過度の血の消耗から虚寒状態となり、そこへ交感神経興奮による食欲低下が重なって慢性の体力不足と
なっていたのです。一方で心労からくる心熱によって不眠や不安感が誘発され、口臭、口内炎の原因と
なっており、また酸味で肝血を収斂しようとしているのだとして、鍼灸も脾虚肝鬱と施術方針を改めました。
まだ若い方だったためか、証と鍼灸施術、漢方がばっちり合えば回復は早かったです。2か月を待たずに
不安感、下痢が治まり、そのあと口内炎もできにくくなりました。不眠が手強かったのですが『酸棗仁湯』
『四物湯』でかなり改善し、終了となりました。約3か月でしたが、口臭だけはマシになった程度でした。
【適応疾患】
「人参」「乾姜」「大棗」で胃腸を温め、胃炎、胃アトニー、胃下垂などを改善し、食欲不振を収めます。
「黄連」「黄芩」は心(シン)と少陰心経の熱を清し、「甘草」で津液を増やして心腎の熱を収めます。心熱が
安定すると動悸、不眠、イライラ、不安、ノイローゼは改善します。お腹の冷えと胸の熱が治まれば、自然と
腸鳴下痢も止まりますし、咽喉の痞えもとれてくるでしょう。
見立てに間違いはないのに、お腹の冷えがとれないなら『四逆加人参湯』などに変方することを考えます。
胸やけがひどく、ゲップが出たりと空気が詰まった感じがあるなら『半夏瀉心湯』。この方は『甘草瀉心湯』
と全く同じ生薬で、「甘草」を少なくすることで「半夏」の効果を前面に押し出したものです。なので、
使い方もほぼ同じです。
(『漢方医学体系(龍野一雄)』『漢方常用処方解説(高山宏世)』
『大塚敬節著作集』『中医臨床のための方剤学(神戸中医学研究会)』
『薬方愚解(木田一歩)』『漢方主治症総覧(池田政一)』より)
芦屋・西宮 鍼灸 香春(こうしゅん)【JR芦屋徒歩6分】