『章門(しょうもん)』【芦屋・西宮 鍼灸香春】
【肝経。側腹部。第11肋骨端下縁】
隠れた名穴というべきなのが、本穴『章門』です。
肝経は厥陰経(ケツインケイ)というグループに属しますが、パートナーの胆経は少陽経(ショウヨウケイ)に所属
しています。肝胆の二経は表裏関係、陰陽関係にあるため、肝経は半分は少陽経に所属していると見做す
ことがあります。例えば血虚などで発生した肝や肝経の虚熱は、素早く表の胆経に影響して、胆経の熱と
なって上昇し、胆経頭痛を引き起こたりします。
このように肝経の異常が少陽経の異常として発症することがまま見受けられます。
『章門』は肝経に所属するツボではありますが、場所が脇腹にあり、脇腹は少陽の支配部位ですから、
間接的に胆経症状を処置するツボにもなります。腰痛、腹直筋の痙攣、肋間神経痛、四肢不随、角弓反張
(後弓反張)などに使われます。
そして同時に五臓の不調全般、慢性病などにも用いられるツボでもあります。
これは東洋医学的にいうと、脾の募穴(ボケツ)だからです。脾は消化吸収、栄養供給の司令塔で、
「募穴」というのは脾へ直接的に働きかける効果のあるツボだという意味です。臓腑への栄養供給は病を
治療する上で最も重要ですから、これは当然といえます。
しかし、ではなぜそれが『章門』なのかという問題が残ります。本穴は確かに、当時の人々が想定した
脾の位置に最も近い場所です。ただ、本穴を使う際には第11肋骨の先端を圧迫して、きゅっとした圧痛や
ぴりっとした刺激痛があることを確かめます。これは肋間神経をチェックしているのであって、脾自体
とは、直接的にはそれほど関係ないように思われます。
『章門』はこうした胸郭の緊張を和らげて酸素を吸引し、胸腹部の臓器全般への血液供給を担保する
作用があるのではないかと考えられます。
当院ではストレス過剰がベースになっている方の不調には、本穴の他、『大包』『輒筋』『淵腋』など
と併せて置鍼、施灸を行います。脇腹は少陽の支配部位であり、少陽は扉の蝶番のようなものと喩えられ
ますから、ここに油を注せば身体の動きがよくなるのは必然の事だといえます。
(『慢性病の漢方・鍼灸療法(藤平健)』『経絡経穴の近代的研究(濱添圀弘)』
『鍼灸孔穴類聚(松元四郎平)』『鍼灸集錦(鄭魁山)』『鍼灸経穴名の解説(高式国)』)
芦屋・西宮 鍼灸香春(こうしゅん)【JR芦屋徒歩6分】
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