『衝陽(しょうよう)』【西宮・芦屋 鍼灸香春】

【胃経原穴。足背部、足の第2・3中足骨間。足背動脈部に取穴する】

 “原穴(ゲンケツ)” という種類のツボは、各経絡に1つずつ備わっています。その経絡にエネルギーを

供給する役目を担うため、エネルギーの不足や過剰による症状や疾患によく用いられるツボです。

 本穴の位置は足背動脈部にあたるため、足の第2・3趾の間を遡って、足の甲で拍動を感じる所が

衝陽』となります。

 別名を『趺陽(フヨウ)』ともいい、胃の気(栄養)が下半身に行き渡っているかをチェックする際に

確認するツボでもあります。

 なにかしらの理由で胃の熱が強くなると、食欲が亢進し、身体に熱感を覚え、お腹が膨れて苦しく

便秘します。場合によって胃熱は経絡に従って移動するため、ノドが渇き、鼻が詰まり、頭痛や歯痛

嘔吐感やムカつきを誘発します。または足の前面の筋肉(前脛骨筋)や足背部が痛みます。

 逆に胃の熱が足りないと、消化不良、食欲不振下痢手足の冷え、寒気などの原因となります。

 このような時に本穴を用いて対処します。熱が強いなら瀉法で熱を抜き、弱いなら補法で熱量を補い

ます。このようにして寒熱、陰陽のバランスを整えることで健康は維持されるのです。

 ご自身でケアされる場合は、マッサージや指圧するのがいいのですが、補瀉が難しいので『足三里

解谿』などを使う方がよいと思います。

 

 【当院での経験】

 秋口に来られた方ですが、たまたま予約当日に風邪をひいたらしく、朝から鼻水がでて、くしゃみを

連発するとのことでした。よく聞いてみると汗はかかない、寒気がする、食欲はあるらしく、発熱には

至っていないものの、脈は浮いていました。簡単にいうと冷えからの感冒で、肺に冷気が入ったために

鼻水とくしゃみが出ているというわけです。『傷寒論』でいう所の太陽病、葛根湯の適応ですが、

肺の冷えの為、発散が上手くできていない状態です。

 肺を元気づけることがまず必要なので、ピリ辛の食べ物で汗をかかせてもいいのですが、これは鍼灸

でいえば「金穴」の作用になります。しかしそれでも今一つ発散、発汗に至らなかったため、『衝陽』

の出番となりました。

 桂枝湯もそうですが、陽気や熱量自体が足りない時は、お腹を温めて熱を作り、それを「金穴」の

作用で身体中に運搬するわけです。その意味では「土穴」やその大元の脾胃を活性化する、というのが

前提になります。そのため胃経原穴の『衝陽』をチョイスしたというわけです。

 その後『肺兪』へ施灸し、『風府』へ刺鍼して、背中がしっとりとしたのでよしとして終了しました。

 翌週お会いすると、くしゃみはなくなり、鼻水は改善。代わりに少々咳が出るとのとこでしたから、

狙い通り冷えが発散され、今度は熱がこもり始めたのでしょう。熱風邪の処置をすると、後日回復した

とのことでした。

 

【主治・効能】

・腸チフス、悪寒+欠気頻発、ガス中毒由来の全身発熱・痙攣、嘔吐、不食不眠、ジフテリア、

 特発コレラ、口眼喎斜、上歯齦炎、下肢神経麻痺、足跗浮腫

・胃疾患、嘔吐、不食、腓骨神経痛、足関節炎、リウマチ、足背浮腫、ヒステリー、ノイローゼ、

 顔面神経麻痺、歯痛、充血、悪寒、欠伸頻発、ガス中毒由来の全身発熱、筋肉痛

・頭面部浮腫、歯痛、顔面神経麻痺、水腫、心窩部痛、腹痛、食欲不振、精神病、足背腫痛

 足部麻痺・無力

・口歪、虫歯、腹堅、寒熱、足背腫脹、足のダルさ

 

(『鍼灸孔穴類聚(松元四郎平)』『経絡経穴の近代的研究(濱添圀弘)』

 『鍼灸集錦(鄭魁山)』『鍼灸経穴名の解説(高式国)』)

芦屋・西宮 鍼灸香春(こうしゅん)【JR芦屋徒歩6分】

 

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